光ファイバーセンシング技術
(担当教員:真鍋 哲也)

近年,光ファイバによる通信は広く現代社会に普及しており,我々の日常生活にはなくてはならないものとなっています.また,日本全国の地中や空中,また世界中の海底などのさまざまな場所に張り巡らされている光ファイバは今後の高度情報化社会の実現に向けての基盤となる重要な社会インフラです.同時に,道路工事や船舶の航行,また地震などの自然災害に起因した破断や損傷の危険に常にさらされています.これらの背景に伴い,光ファイバ網の安定運用を目的として,光ファイバの状態を監視する技術の需要もますます高まっています.我々は,光ファイバを利用した振動センシングの様々な手法を提案・研究しています.

現在,光ファイバセンシングという光ファイバの温度・歪み依存性を利用した技術が広く研究されています.光ファイバセンシングは,本来の光ファイバの用途である情報伝送に加え,センサとしての機能も発揮するため,様々な環境センシングへの応用が期待されています.一方で,光ファイバセンシングは測定できる物理量は温度や歪み,振動などに限定されていることが課題としてあげられています.実際,環境センシングにおいては様々なセンサが利用されています.例えば,河川の氾濫や工事現場の遠隔監視においてはビデオカメラなどを用いられています.ビデオカメラなどといった各種センサに光ファイバセンシング技術を統合することで光ファイバセンシングにおける課題解決と遠隔モニタリングを含む環境センシングの可能性を広げることができると考えられています.そこで我々は,センサから得た0と1で構成されるデジタル信号を位相変調し,光ファイバケーブルに加え,光ファイバ振動センサから受信信号を復調することでセンサのデータを検出するという手法の研究を行っています.

近年,FTTHを始めとした光ファイバを用いた通信が広く普及しており,人類社会に欠かせないライフラインとなっています.これに伴い,既存の通信用光ファイバをセンサとして活用し,光ファイバ網のメンテナンス効率化や産業分野への応用に関心が高まっています.光ファイバ網を用いた振動センシングは代表的なセンシング技術の一つであり,様々な手法や用途が検討されています.例として,地震監視,交通監視,ネットワーク設備の位置特定,土木構造物の構造健全性の監視などが挙げられます.振動センシングは応用範囲が広いため,安価なものから手ごろでシンプルなものまで,様々なセンシング方法が求められています.そこで我々は,高感度かつ簡易的な構造を実現する光ファイバ振動センサとして,光ファイバの2モード領域を利用した光ファイバ振動センサについて研究を行っています.

無線通信の信号処理
(担当教員:安藤 ダニエル明)

無線通信では,各種の信号処理には伝送路特性(電波についてのフェージングという現象の度合)が必要となります.伝送路特性という情報の獲得のためには,電波が基地局に到来する角度の推定が必要です.また,レーダーシステムでは,ある物体の位置の特定のために,レーダーアンテナから放射された信号が対象物体に反射したときの反射波の方向を推定します.このように,電波があるアンテナアレーに入射する角度・方向を知ることが様々な場面で必要とされ,「到来方向推定」と呼ばれます.一方,第6世代移動通信システム(6G)には,伝送容量の増加などを可能とする,数多くのアンテナが設置された基地局(大規模MIMO技術)の導入が推進されています.そのため,大規模MIMOで到来方向推定を行うことが望ましいとされています.

次世代移動通信システムでは,これまでの地上系ネットワークに加えて,衛星通信や海中通信といった非地上系ネットワーク(NTN)の研究開発が重要となります.特に,成層圏通信プラットフォーム(HAPS)を取り入れた無線通信システムの期待が増しています.しかし,HAPSの飛行高度によるカバレッジエリア拡大に伴うユーザ端末数の急激な増加はNTNの課題の一つです.そこで,本研究では,次世代システムにおけるマルチユーザー通信を支えることが期待される非直交多元接続(NOMA)方式をHAPSの多元接続方式としての利用を検討します.