背景
近年,FTTHを始めとした光ファイバを用いた通信が広く普及しており,人類社会に欠かせないライフラインとなっています.これに伴い,既存の通信用光ファイバをセンサとして活用し,光ファイバ網のメンテナンス効率化や産業分野への応用に関心が高まっています.光ファイバ網を用いた振動センシングは代表的なセンシング技術の一つであり,様々な手法や用途が検討されています.例として,地震監視,交通監視,ネットワーク設備の位置特定,土木構造物の構造健全性の監視などが挙げられます.振動センシングは応用範囲が広いため,安価なものから手ごろでシンプルなものまで,様々なセンシング方法が求められています.そこで我々は,高感度かつ簡易的な構造を実現する光ファイバ振動センサとして,光ファイバの2モード領域を利用した光ファイバ振動センサについて研究を行っています.
目的
我々は,高感度な光ファイバセンサの実現を目指し,2モード領域を用いた光ファイバ振動センサ(TMセンサ)の研究を行っています.TMセンサは,1本の光ファイバ内で基本モードと高次モードの2種類の光を伝搬させることで,従来の光ファイバ1本のみでセンサ部を構成することが可能です.TMセンサに使用する高次モードの光は,光ファイバの曲げなどの外的要因に影響を受けやすいという性質を持ちます.このため、高次モードの光を利用したTMセンサも同様に外部からの影響を受けやすいと考えられ,高感度なセンサであると期待されています.そこで我々は,TMセンサの振動に対する感度を評価するため,他の光ファイバ振動センサとの感度比較実験を行っています.
最新の成果
現在,2モード領域を利用した光ファイバ振動センサ(TMセンサ)の振動に対する検出感度を,マッハツェンダ干渉計センサ(MZIセンサ)と比較検討しています.比較のため,同一のケーブル内にTMセンサとMZIセンサを構成し,振動スピーカーを用いてケーブルに振動を与えました.各センサから得られる振動の振幅の大きさを比較することで感度を評価しました.実験の結果,与えた振動が100Hz~3kHzの範囲において感度はMZIセンサ,TMセンサの高次モード,基本モードの順で高いことが分かりました.また,MZIセンサの感度が最も高かったことから,高次モードの光が十分に発生していない可能性があることが分かりました.今後は,基本モード,高次モードを入射し感度に変化があるかどうか確認する予定です.

関連論文など
- A. Nakamura, T. Manabe, K. Morikane and Y. Koshikiya, “Inter-Modal Interferometry Using Two-Mode Region of Single-Mode Fibers for Vibration Sensing,” in Journal of Lightwave Technology, vol. 42, no. 18, pp. 6431-6436, Sept. 2024.
- K. Morikane, T. Manabe, A. Nakamura, and Y. Koshikiya, “Vibration Detection Sensitivity of Optical Fiber Vibration Sensor using Two-Mode Region of Conventional Single-mode Fibers,” 2024 International Conference on Emerging Technologies for Communications, proc. 85, P1-21, 2024.
- 森金航平, 真鍋哲也, 中村篤志, 古敷谷優介, “2モード領域を用いた光ファイバ振動センサにおける振動検出感度の検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, 2023.
- 森金航平, 真鍋哲也, 中村篤志, 戸毛邦弘, “2モード領域を利用した光ファイバ振動センサにおける振動に対する検出感度の検討”, 電子情報通信学会技術研究報告Vol. 124, No.202, OFT2024-46, pp.66-69, 2024.